ミルキングシステム 点検レポート

北海道豊原牧場様(270頭搾乳)でミルキングシステムの点検を実施しました。

点検項目

パルセーターの拍動比および拍動回数

システム真空圧度測定

  • パルセーター配管、調圧器、バキュームポンプ、レシーバージャー
  • ユニット落下テスト(真空圧の低下を測定)
  • クロー内圧とマウスピース内圧の測定(青印はクロー内圧、赤印はライナーマウスピース圧)

システム真空圧度測定

搾乳手順および離脱後に手搾りした残乳量

  • 前搾り、マッサージ、ディッピング、ミルカー装着までの時間(ラグタイム)、自動離脱のタイミング

泌乳曲線データの分析

  • BIMOの有無(搾乳開始直後にグラフ曲線が落ちている状態で、乳頭に大きな負担がかかる)
  • TS500(搾乳を開始してから乳量が0.5Kgになるまでの時間、推奨値は0.16分以内)
  • TMHG(主搾乳のトータル搾乳時間、推奨値は4~5分以内)
  • DMHG(主搾乳時の1分間の平均流速Kg/分、推奨値は2回搾乳で3.9Kg/分以上)
  • 2MG(最初の2分間の乳量、推奨値は2回搾乳で8.4Kg/分以上)

搾乳中におけるエアの侵入の計測

  • SPL(空気の含有率、推奨値はローラインミルク配管で15~30%、ハイラインミルク配管で25~35%、推奨値以上だとドロップレッツ現象を引き起こし、他乳区への乳房炎感染を高める可能性がある)

電気伝導率の計測

  • ELHMF(体細胞の指数となる塩化ナトリウムの測定値、推奨値は6.00~6.50ms/cm)

洗浄モニタリング

  • お湯の温度(主洗浄時は70℃以上、排水時でも50℃前後は必要)
  • 洗浄水の量(満水率、配管内では満水時に1分間以上100%の満水率が必要)
  • 洗浄力(乱流率、水の塊)

点検結果

  • 搾乳前準備は前搾り、乳頭拭き取りについては問題ありません。バイモダリティ値が低く搾乳時間が長いです。真空圧の設定に問題の可能性があります。
  • 洗浄時の測定でお湯の温度、水量に問題がありました。洗浄の循環排水のディバーターが機能していない問題があります。

点検結果

点検結果

ご提案

①パーラーストール内へゴムマット施工

パーラーストール内のコンクリートに削れ、穴が多数ありました。搾乳中にライナーを蹴り落としてコンクリート穴の汚水中にエアを吸ったままユニットが落ちる場面が何度かありました。この場所にゴムマットを張ることをご提案します。ゴムマットは牛がリラックスして搾乳する効果もあります。

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②パルセーター配管内の清掃

パルセーター内にこの汚れが入り込むと正常な動作を妨げます。汚れがひどい場合はラインの交換を提案します。

パルセーター配管内の清掃

パルセーター配管内の清掃

③ミルクチューブの長さ調整

長いホース(紫印)は、ピークミルクフロー時のクロー内圧を下げ、搾乳を遅らせユニットのアライメントを悪くし、ライナースリップが増す原因となります。ホースは出来るだけ短くして、リフトロスを無くしましょう。

ミルクチューブの長さ調整

④消耗品の定期交換

  • ライナーは搾乳回数1200回、洗浄回数90回
  • ショートエアチューブ60日
  • ミルクメーターガスケット180日
  • ゴム製品120~180日で交換が目安です。

⑤自動洗浄ディバーターの修理

自動洗浄のディバーター(青印)が、破損しているため常に洗浄水が循環排水できていません(黄色印)。最初のすすぎ工程ができていません。

自動洗浄ディバーターの修理

⑥パルセーターの拍動比、拍動回数、真空圧、自動離脱のタイミングの調整

離脱間際にミルカーを蹴り落とす牛が多く見られました。過搾乳の可能性があります。現場でパルセーションサイクルを測定し、搾乳後に手搾りした残乳量をチェックしながら変更を行うことをお勧めします。数値は一気に変更せず、徐々に牛を慣らしながら少しずつ数値を変更してください。搾乳時間に変化が見られると思います。

点検終了後

豊原牧場様では、長らく体細胞数30万を切れませんでしたが、ご提案したうちいくつかを実施して頂き、体細胞数が24万まで下がり、ソックスの汚れが激減し、乳房炎頭数が15頭から7頭に減りました。

また「スタッフの搾乳に対する意識が全く変わった!」と嬉しいご報告も頂きました。

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