知っておきたい!サイレージづくりに大切なこと

アメリカでは牛の健康問題の60%は粗飼料の品質に由来するといわれています。良い粗飼料のためのサイレージを発酵させる4段階を解説します。

「健康な牛は良い粗飼料から」

International Stock Food Corp ピーター・ヴィネリ
アメリカでは牛の健康問題の60%は粗飼料の品質に由来するといわれています。粗飼料の品質を向上させるためにはどうしたらいいのでしょうか。

良い粗飼料のためのサイレージを発酵させる4段階

発酵させるということは、サイロのphを3.8~5.0にする事です。サイレージにする粗飼料によってphはかわってきます。ピクルスをつくるのと同じ作業です。(日本でいう、「おしんこ」をつける?)

  1. 好気段階
  2. 発酵段階
  3. 安定段階
  4. 牛に給与する段階

サイレージ発酵の 4つの段階

サイレージの中で変化するバクテリア

最初の酸素のある段階では乳酸菌生成バクテリアは増殖しません。酸素がすべて無くなってからはじめて、乳酸生成バクテリアは増え始めます。そしてある一定の数になるとそれ以上増殖しなくなります。 そして、牛に給与する段階になると、酸素にふれる事となり、乳酸生成バクテリアの数は減って行きます。

1.好気段階:大切なのは、酸素を早く取り除くこと!

この段階は、唯一、農家が管理できる段階です。この段階でどのようなサイレージが出来るかが決まってしまいます。サイロの中のちょっとしたスペースに酸素は閉じ込められています。 この酸素がすべてなくならない内は発酵は始まりません。鎮圧などによって、この酸素をいかに早く取り除くかという事が大事です。

なぜ早く酸素を取り除かなくてはいけないのでしょうか?
一番目の理由は、サイレージの発酵を始めさせなければいけない。
2番目として植物の持っている栄養が失われてしまうという事があります。
栄養が失なわれてしまう理由
1.酸化 サイロの中で酸素があるうちは、植物は変化し続けます。植物はサイロ内の酸素を吸収して二酸化炭素を放出します。その植物呼吸によって植物内の炭水化物は使われてしまいます。
2.カビや酵母菌の増殖 植物呼吸が長引けば、それだけカビや酵母菌の数は増えてしまいます。また、カビがはいったエサを給与することで牛に健康問題が発生することもあります。よって、好気段階でいかにカビや酵母菌の数を抑えるかが大事なこととなってきます。

カビはほとんど畑から持ち込まれます。カビはとても早いスピードで増殖していきます。わずか1時間で約倍の数まで増殖します。サイロをつめて早い段階で熱をもつ場合は、ほとんど酵母菌によるものです。酵母菌はカビ以上のスピードで増殖します。

乳酸菌の添加剤を添加しても、カビや酵母菌の増殖をおさえるわけではありません。

2.発酵段階:phを早く下げる!

発酵の第二段階の目的は、phをはやく下げることです。

最初の段階でカビや酵母菌の増殖を抑えることができれば、自然界にある乳酸菌生成バクテリアが酸を生成してサイレージを安定的させることが出来ます。

3.安定段階

乳酸生成バクテリアがある一定の数になると増殖がストップして、安定段階になります。phが3.8~5.0になりサイレージは安定します。

この段階になったら生物的には変化は起こりません。これにより長期保存が可能になったと言えます。 この後は、密閉された状態を保持するためには鳥害、鼠害などのおそれがあるようであれば、防御対策をしなければなりません。

良くサイレージを保存できる期間はどれくらいなのか……? と質問されることがあります。カナダで目にしたチューブサイレージは2年過ぎても、新しい物と変わらない状態で維持されていました。

4.給与段階:好気段階での成果が決めて!

この段階も皆さんが管理できる段階です。

サイロを開ける段階ですので、サイロは空気に触れます。もし、第1段階の好気段階で、カビや酵母菌を抑えられれば、この段階でもカビは見えないはずです。しかし、それができていなければ最大で30%のロスをここで受けてしまう危険性があります。詰め込み段階で封じ込められていたイースト、酵母など空気に触れることで復活して繁殖し始めます。

ヘテロ型の発酵ならば、酢酸によってサイロの日持ちも良くなります。

サイロを開けたときに熱をもつようなら、なにか他のところに問題があるはずです。それは、酵母菌やカビが多いという事かもしれません。鎮圧が弱いかった事も考えられます。気密性が失われていたかもしれません。十分発酵していない段階の場合にも熱が発生します。

サイロガードはどの段階でも効果がある!

サイロガードは、どのステージで効果があります。好気段階では、イオウが働き、嫌気段階ではアミラーゼ酵素が利用されます。そして、最終段階、牛に給与する時には、再びイオウが働きます。

プロピオン酸を使った製品ですと、好気段階でしか働きません。乳酸菌を使った製品は、嫌気段階でしか効果がありません。

良い粗飼料のためのヘテロ発酵をサイロガードで

サイレージの発酵をうまくコントロールすると、粗飼料のエネルギーが高まるのは研究で十分に実証されています。典型的なデータには、ニューキャッスル大学(イギリス)のビーバーとアームストロングが発表したのがあります。

理想的な発酵とは、乳酸を多量に生産して全体のphを即座に下げ、同時に粗飼料のエネルギー濃度を上げるように十分なヘテロ型発酵が行われることです。サイロガードを使うとヘテロ型の発酵になります。いろいろな種類の菌が同時に発酵するので、発酵するまでにそれほど時間がかかりません

ホモ型の発酵の場合、発酵が始まるまでにある種類の乳酸生成バクテリアの数が独占しなければならないので時間がかかってしまいます。

ホモ型発酵とヘテロ型発酵

ヘテロ型発酵は、スムーズな発酵

ヘテロ型の発酵では、いくつもの種類の乳酸菌が同時に発酵している状態です。

地元に存在し、サイロのなかで自然に発酵している状態。植物に含まれている乳酸菌を活用して発酵します。より自然に発酵をするため、スムーズな発酵をします。また酢酸も発生することにより、開封後の変敗も急激にならない特徴があります。

故マッカロー先生は、サイレージの場合はホモ型の発酵よりヘテロ型の発酵の方が良いといっていました。

ホモ型発酵は、開封後にサイレージが傷みやすい

ホモ型の発酵は、添加物によって乳酸菌が添加された状態での発酵です。地元のバクテリアではなく、外からの乳酸菌を添加するため、数の上で、この外からの乳酸菌が支配なければ発酵がはじまりません。ですからこのような商品を作っている会社は、ものすごい数の乳酸菌が添加されるようにしています。

この場合、ものすごい数の乳酸生成バクテリアが入るため、植物のもっている栄養がこの莫大な数の乳酸菌によって使われてしまいます。ほとんどが乳酸生成バクテリアなので、乳酸ばかり生成され、酢酸があまり生成されないという問題があります。酢酸の役割はサイロのもち(日持ち)に影響します。酢酸が無いとサイロは早く傷んでしまいます。ホモ型発酵は開封後にサイレージが痛みやすい傾向がある。

理想的には、乳酸2に対して酢酸1の割合が良い割合です。ホモ発酵の場合、この割合にはなりません。

なぜグラスサイレージはコーンサイレージより作るのが難しい?

一般的にいって、グラスサイレージの方がコーンサイレージより水分が多いからです。また、植物中の糖分もグラスの方が少ないからです。グラス類の糖分のほとんどが澱粉質です。澱粉質はなかなか発酵しづらいのです。グラス類はバッファー能力が高いという事です。バッファー能力が高いとはphが変わりづらいという事です。バッファー能力は植物によって変わってきます。コーンはバッファー能力がとても低いです(phがかわりやすい)。

いつ刈り取りを行うか

カナダの研究によるとグラスは午後に刈り取りを行った方が、午前中に刈り取りを行った場合と比べて糖分が36%多く、乳量も0.9kg/頭多く生産したとの報告がありました。

これは光合成の働きによる物です。このように粗飼料を付加価値の高い時期に刈り取ることも大切です。

グラスサイレージでは酪酸が多い事が問題に

グラスのサイレージの場合、クロストリジウム菌による腐敗が問題になります。これは、酪酸に関係します。クロストリジウム菌が酪酸を作ります。クロストリジウム菌は作物と一緒に取り込まれます。クロストリジウム菌は主に土壌とフンの中で生息しています。よって、植物を収穫する際には、できる限り土壌を取り込まないようにする必要があります。また、生フンを畑にまかないという事も忘れてはいけません。

水分が多く、糖分が少なく、バッファー能力が高い。このような環境では、クロストリジウム菌が活動しやすい状態です。クロストリジウム菌の被害を受けたサイレージを分析すると、乳酸が減り、酢酸と酪酸の割合の多いサイレージとなります。

このようなサイレージは多くの問題があります。まず、臭いが大変悪い。酪酸はphがとても高い(ph5.2位)ので、このようなサイレージはカビが生えやすいという問題があります。

また、酪酸は牛の免疫力を低下させてしまいます。よって、免疫力が落ちたところにカビが混ざったエサを食べてしまうことにより牛は健康上の問題を起こしやすい状態になってしまいます。

アメリカの栄養コンサルタントや獣医士は、酪酸を含んだサイレージは牛には給与しないようにとアドバイスしています。

廃汁について

なぜ、サイレージの廃汁がでるのでしょうか。植物が成熟しきる前に刈り取りを行う。また、予乾の時間が取れなかった時や、収穫前に雨が降ってしまったなどがあげられるでしょう。いかに早く発酵させるかが廃汁を防ぐポイントです。

廃汁には水溶性のビタミン、炭水化物、糖分が含まれています…。ということは、発酵に必要な糖分が流れ出ていってしまうので、良い発酵を行うことが難しくなると言う事です。

なぜなら、乳酸菌は糖分を使って発酵をうながしているからです。発酵が上手く行われないと、クロストレジウム菌の問題や、酪酸の問題がおこる可能性が増します。たとえ、酪酸の問題が起こらなくても、糖分が流れ出てしまうので、エネルギーの少ないサイレージを牛に食べさせる事となってしまいます。そのため、濃厚飼料を余分に与える事となってしまいます。濃厚飼料が増えるという事は、こんどはアシドーシスの問題が心配されます。鎮圧をしっかりと行っていても廃汁がでてしまうと鎮圧そのものが崩れてしまうことにもなります。高水分になればなるほど酪酸発酵もしやすくなります。

水分が多いと思われるときは、切断長を少し長めにする事が良いでしょう。ただし、切断長が長い時は、鎮圧を行うときに注意が必要です。日本で多く取り入れられているロールパックサイレージは空気を遮断するという意味では良い方法だと思います。

Q:ロールを切ったときに廃汁がでるのですが、その廃汁を一緒に牛に与えても良いですか?

A:廃汁の臭いしだいです。

悪い臭いでなければ、お酢のような臭いなら一緒にあげても良いです。これは、ピクルスのジュースのようなものですから。しかし、臭いがくさかったり、カビがみえるなら捨てた方が良いでしょう。

サイロガード利用者の声

  • 牛舎からサイレージ臭がなくなり、近所迷惑も解消しました。酪酸発酵しにくいようだ。
  • 素手で触ってもにおいが付きにくくなった。バケツも再利用で役立つよ。
  • サイロガードの良さは、まず牛舎からサイレージ臭が発生しなくなったこと。以前はサイロ(縦型コンクリート)で上部がカビ易く、追い詰めが必要だった。底の部分になると、コーンサイレージの廃汁で酪酸発酵してしまっているので廃棄していた。しかし、サイロガードを使用するようになって、廃棄するサイレージがゼロに近いくらいになった。以前と比較して違っている状態は上部のサイレージの水分が高い感じがする
  • 土が混じったロールがカビなくて、きれいに発酵していた。驚きだね。
  • 昨年は300個つくったが、廃棄は破れていた1つだけでした。
  • 孫からも鼻をつまんで「臭い…」と言われていたが近所からも臭いと言われなくなった。

弊社担当スタッフより

サイレージ作りは良いサイレージを保証してくれる添加剤が大切です。できあがって開封するまで、自信が持てないのは最悪ですよ。カビ毒、ボツヌリス菌の事故が多くなりつつあります。すばやくpHを下げてサイレージ化することが必須ポイント。

このようにナスアグリサービスの担当者に農家さんの声がこれほどうれしそうに語ってくれることはそんなに多くはありません。実際、サイレージなんか何も使わなくてもそんなに変わらない… と言う声も多く耳にします。また、金を使った割に良い結果のでないものを使って楽しくない気持ちになってしまった農家さんも数多くお見えでした。でもこの生の声で草作りを今一度感激したものにしたい… と感じた方は一度ナスアグリサービスへお電話下さい。

ご注意 サイロガードは機械添加に向いているリキッドタイプ(25kg)と顆粒のドライタイプ(25kg)があります。

ロールにはリキッドタイプ、バンカーにはドライタイプをお勧めします。奨励するご使用量は、どちらも同じでサイレージ原料1トン当たり1kgです。

リキッドタイプは、薄めたりせずそのままご使用ください。薄めると、サイロガード本来の効果が弱まります。

サイロガードの成分をさらに詳しく解説します。

商品に関するご質問・ご相談がありましたら弊社の専門スタッフが対応させていただきます。 まずは、お客様の酪農環境をお聞かせください。


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